賽の目の半次は泣き上戸/立川談春独演会/イイノホール/2007/6/11
《演目》
○厩火事 談春
~中入り~
○らくだ 談春
「厩火事」は「替り目」と並んでもはや十八番といえると思います。
「らくだ」。わたしは談春の「らくだ」を聴く機会が今までありませんでした。「らくだ」はらくだ本人が死んでいるところから始まるので、らくだ本人を演じる場面はありません。しかし、らくだがどういうやつであるか、というのは結構重要なのだということが、今日きいていてよくわかりました。談春の「らくだ」はらくだ以後ではなくて、らくだの存在が不可欠なのでした。
らくだはいやなゴロツキです。乱暴で、人の弱みに付け込む。
どれだけ嫌われているやつなのか、という点はまず前半でかなりくわしく説明されました。そのことがあってのち、香典を出し惜しむ大家や月番に死んだらくだのかんかんのうを踊らせるという、さらに性質の悪い嫌がらせをして恐喝するまでが前半。恐喝するのは兄貴分の賽の目の半次、泣きながら請け負うのがくず屋の久さん。
前半の半次のアクの強さは、談志の迫力に談春の自前の活きのいい無頼が加わって、なかなかかっこいい。
後半、酒が入ってくず屋の人が変るところが見せ場ですが、ここで談春はかなり大胆な場面転換をします。通常は、くず屋の酒癖の悪さだけがクローズアップされますが、談春版は強面の半次が突如泣き上戸になり、ふたりの立場が完全に入れ替わってしまうのです。
この場面転換は、「付き馬」に似ています。馬でついてきた牛太郎のパートナーが、ずるがしこい客からはや桶屋にかわるところです。さらに「らくだ」の場合は、全く取り得のないらくだが、実は苦労人でかわいそうなヤツだったというふうな、泣き上戸による涙の解釈も始まるのです。
落合の焼き場までかなりの距離があるにもかかわらず、このふたりにかかった魔法がとけないのはやや不自然ですが、この「らくだ」の後半の展開は、前半と違って、どちらかというと志の輔に近い、現代的な東京落語になっていると思いました。こぶの下げはあまり面白くないけれど、久々に聴いた談春は引き出しを増やしていて、新しい展望が感じられたのです。(texted by brary)


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