立川志の輔独演会/ブロッサム中央会館
○千早振る 志の春
○踊るファックス 志の輔
~中入り~
○柳田格之進 志の輔
「柳田格之進」は、いきなり五十両がなくなったところから始まります。すぐに番頭の口から「柳田様」と出てくるのでわかるのですが、ちょっとびっくりです。
しかしそこにはなにか訳があるに違いない。貧しい浪人の柳田が、ふとしたことから碁好きの大店の主に出会い、いけない、いけないと思いながらも碁を打ちに通うところをすっぱり端折ってじっくり演ろうとしているのはどこなのか。
それも間もなく出てきます。ふたりが碁を打っているところに届けた五十両がなくなったのを、柳田の仕業と疑う番頭が柳田を問い詰めるところ。その柳田の応答です。柳田についての説明は、貧しいということ以外それまで一切ないのに、ここで柳田がどういう人物であるかが観客にはわかります。そのため、番頭も少し狡猾、軽率にデフォルメされていますが、柳田は金を盗ってはいない。誇り高く、言い訳をせず、きっぱりとした気性です。人望もあり、剣の腕も立つと思われます。
志の輔の「柳田格之進」はこのように、あくまでも客観的にしか描写されません。彼がひとりごちたりする場面はないのです。その気性について補うのは、濡れ衣に切腹するであろう父の心を見越して、五十両を整えるため吉原に身を売ろうと申し出る娘でした。彼女はこういいます。「父上の、武士のお志は商人にはわかりません。」
年が明けて、仕官を果たして見違えるように立派な拵えになった柳田が、まだ娘を吉原に置いたままであることや、ハッピーエンドとなってその娘が番頭と一緒になったりする理不尽な筋書きも直されていました。失せた五十両は店側の粗相だったことがわかって、柳田が主人と番頭の首を切ろうとし、それをしないとき、そばにいる娘が父と二人を赦します。硬骨漢柳田格之進は、娘を軸にして心根を見せるのです。本当に見事です。(texted by brary)


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