February 11, 2009

獣の奏者/上橋菜穂子/講談社

うーん、もったいない。
このもったいないオバケをどうしてくれよう。

「闘蛇篇」が文句なしに面白くて、「青い鳥文庫」の3巻・4巻が待ちきれずにハードカバーを買ってしまったのですが、「王獣篇」でなんだか失速してしまった感が否めません。
「失速」じゃないなー、展開は逆に急ぎすぎてる気がするし、なんか「闘蛇」のリアルさに比べて「王獣」がポケモンみたいに思えてくるところがいけないのかも。
「守り人」シリーズも読んでるので、その丁寧さに比べて何か非常に不完全燃焼な感じが「どうしてくれよう???」の正体です。

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September 05, 2008

フロスト気質 Hard Frost/R.D.Wingfield/創元推理文庫

遂に出ました!フロストシリーズ第4弾。
前回「待ちきれないので原作を読む」と宣言しましたが、やはり英語の壁は厚く4年あまりも放置しておりました。そしていつのまにかフロスト警部の存在すら忘れていました。
しかし先日京都出張の新幹線に乗り遅れたその5分後、品川駅の本屋で「フロスト」のタイトルに遭遇したのです。まさに電撃。次の新幹線の出発も迫り、何も考えず文庫の上下二巻を手に取り、レジで2200円の会計をすませ、その高価さに驚きつつ、「Hard Frostというタイトルには覚えがある・・・もしやまた二重購入では?」と自分に懐疑しつつ、車内で開いたところ・・・おお。

作者のR,D,ウィングフィールド氏が亡くなっていたとは!
いささかのショック。そして初版の日付はまぎれもなく新刊。2008年7月31日。
訳書が出るのが13年もかかってもいいものか。は置いとくとして。
一気に読みましたー

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July 02, 2008

木枯し紋次郎/笹沢左保/光文社文庫・新潮文庫

追悼・市川崑! ということで、今年2月に亡くなった市川崑監督の特集で「木枯し紋次郎」を見て無茶苦茶にはまってしまった。1972年のフジテレビのドラマだが、市川崑の演出は天才。奥さんで脚本家だった和田夏十作詞、小室等作曲の『だれかが風の中で』の主題歌は伝説でもあるが、市川崑のオープニング映像はストップモーション、カット割、望遠と街道を旅する紋次郎の姿を次々と映し出し、これだけを繰り返し見てもまったく飽きない。紋次郎役の中村敦夫はかっこよすぎて涙が出る。 DVDを第38話まで見て、笹沢左保の原作も「帰って来た木枯し紋次郎」まで文庫で20巻、113話を読破。原作の笹沢左保も2002年に亡くなっており、1971年から1998(?)年まで書き続けられた木枯し紋次郎が5度目の復活を遂げることはもはやない。

「紋次郎」の名前は子供の頃から知ってたけど、笹沢佐保の名前はよく知らなかったし、小説もまったく読んだことがなかった。銭形平次を知ってても岡田綺堂は知らないし、ルパンは知っててもモーリス・ルブランは知らない。あまりにも成功した主人公を持つ小説というのは、そういう運命にあるのだろう。

しかし笹沢佐保の文体は格好いい。タイトル自体からかっこいい。

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June 10, 2008

移動しなくても旅はできる 村田賢比古『時差ボケ東京』

ここに本の話題を書くのは本当にひさしぶりです。
それでも、この写真集は特別です。わたしがmasaさんこと村田賢比古さんのKai-Wai散策に度々お邪魔するようになったのは、ここを始めてまだ間もないころでした。

Kai-Wai散策の魅力については、実際にご覧いただけばおわかりのとおりです。ユーモアにあふれたまなざしと文章にはmasaさんのお人柄が現われています。けれども、masaさんの眼と足は決して甘くない。町を歩き、みつめるということは、実は大変きびしいことだとわたしは思っています。物見遊山ででかけた者に対して、風景はこころを閉ざします。

わたしにはそれだけの勇気がなくて、ただ繰言をのべているだけですが、masaさんは風景の中にあるすべてのもの、建築や小さな植木鉢や、自転車や線路、そしてそこにいる人にきちんと対峙なさるのです。そこには、清潔な敬意が感じられて、わたしはいつもmasaさんからそれを分けていただいているのです。

しかし、わたしは何にもわかっていなかったのかもしれません。
写真集をおつくりになっていらっしゃるご様子は、なんとなく感じていたのですが、masaさんがこよなく愛していらっしゃる京島のLOVE GARDENさんでこの写真集を手にしたとき、masaさんがどれほどの覚悟をもって東京の街を歩き、写真を撮っていらっしゃるのかを改めて思い知ることになったからです。

『時差ボケ東京』に写っているのは時間です。Kai-Wai散策が幾多の街歩きブログと決定的に違うのは―写真のクオリティはいうまでもありませんが―時間でした。それは、懐古ではありません。同じ場所を繰り返し訪れることによって、masaさんは風景の中に時間が生きていることをご存じでした。それは「定点観測」でもない。今、この瞬間も風景は生きているのです。

ステレオタイプになってゆく街から遠ざかってゆこうとしていたわたしは愚かでした。
この写真集に移っている場所そのものを、わたしは何度も「見かけて」いたのに、見ていませんでした。ここでもわたしは繰言をのべていたにすぎないのでした。東京は、こんな街だったのに。

ご近所ブロガーのみなさんが、次々とmasaさんの写真集を紹介していらっしゃるのを知りながら、今日まで拝見するのをとどめていました。自分ができるせめてものこととして。

そして「勇気を出して」このエントリーを書きました。むろん、まったく充分ではありません。masaさんのような覚悟をもって街を生きる自身もありません。それでも、明日から見る風景は、すこし違っているような気がします。そのことを早く確かめたくて、愛用するみどり色の自転車に、こんなふうに風景の時間のなかを走りたいかどうかを、尋ねてみずにはいられないのです。(texted by brary)

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August 05, 2007

追悼 阿久悠

8月2日朝、作詞家阿久悠の訃報を受けて、メディアは彼の業績を一斉に報じました。
日本テレビで流れた、『また逢う日まで』尾崎紀世彦の映像が、たまたま三フレーズ目の歌詞を間違えていたものだった(作詞家の追悼なのに)ことはご愛嬌として、概ね妥当な内容でした。

しかし私が思うのは、なぜ誰も久世光彦のことを言わないのだろう、ということでした。
阿久悠の業績は実に多様です。ですが、彼がその黄金時代におそらく最も愛していたのは久世光彦と共通する仕事だった。七十年代中期の、この二人の仕事は一種の奇跡であると私は思うので、そこにフォーカスされないことに違和感を感じたのです。

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May 07, 2006

若者殺しの時代/堀井憲一郎/講談社現代新書

あれ、ホリイさんだ、とABCで手に取ったら、第1章「1989年の一杯のかけそば」の「僕は、この年は『一杯のかけそば』の年だったと思っている。1989年は80年代最後の年で、昭和最後の年だった」というフレーズが妙にひっかかったのと、週刊文春で連載中の「ホリイのずんずん調査」が好きだったこともあって、購入して30分くらいで一気に読んでしまった。帯には「若者殺しの下手人は!?80年代に謎あり!」とある。

braryにすすめられた70年代生まれの社会学者が書いた80年代論がどうにもしっくりこず、なんだかナンシー関へのラブレターみたいだな、結局君は80年代のお祭りに参加できなかったのが無念だっただけなんじゃないの、みたいに思っていたこともあって、実際に80年代を「若者」として過ごしたホリイさんの「80年代論」は現場感覚に満ちていて面白かった。

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March 24, 2006

中村屋のボース/中島岳志/白水社

新宿中村屋が以前は本郷にあって、そこを居抜で買った相馬夫妻の婿がインド人だったために、インドカリーで有名になった。というところまでは『夏目房之介の講座』(たぶん)で知っていましたが、そんな時代にどうしてインド人のお婿さんをもらうことになったのか、そもそもそれはどんな人なのかということは、寡聞にして知りませんでした。そんなわけで、この本を最初に書評でみたとき興味を覚えたのですが、店頭で探すこともさぼっているうちに大佛次郎賞を受賞したのでちょっと驚きました。そんな本なのですね?

著者は1975年生まれの研究者。この本を執筆するために二十代をすべて費やしたとあとがきにあります。博士論文ではアジア太平洋研究賞を受賞していますが、どちらかといえば地味な分野で、こつこつと対象に立ち向かう態度は本の中にも溢れています。

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March 07, 2006

追悼 久世光彦

今、私の手元には久世光彦の本が何冊かあります。
最初に買ったのは『昭和幻燈館』(中公文庫)だったでしょうか。
文庫版で出たのは1992年ですから、まださほど経っていない。しかし、彼の作家生活はもっとずっと長かったような気がしているのです。

同じく、久世光彦の演出によるビデオが何本かあります。彼が肩書からテレビ演出家をはずさなかったのは、向田邦子について山口瞳が書いた文章へのアンチ・テーゼであります。渥美清を寅さんに、松村達雄をおいちゃんにしてしまうマス・メディアの中で、彼のドラマのいくつかが忘れられるのはつらい。

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February 19, 2006

世の中ついでに生きてたい/古今亭志ん朝/河出書房新社

古今亭志ん朝の対談集です。
志ん朝はCD化を嫌ったと同じく、自著作といえるものがない落語家でした。
たとえば立川談志は若いころから落語論を書きまくっていますが、志ん朝は落語の面白いのは「たぬきが出てくるから」などと言ってケムにまいている。たぶん、そういうことは野暮だし言いたくない、というものがあったのでしょう。

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December 07, 2005

本が崩れる/草森紳一/文春新書

面白い本というものはありますが、面白度において図抜けた本というものもあります。
草森紳一氏の名は、生家にある非常に古びた本の背表紙でなぜか知っており、しかしその名前のイメージから「フランスジョーク」のような、「洒脱なおじ様」と決めつけていたので、読んだことがありませんでした。

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